

「また新しい制度か…」
正直に言うと、この記事を読んだとき、胸の奥でそんな言葉が浮かびました。
厚生労働省が検討している
住宅型有料老人ホーム入居者向けの新たなケアマネジメント制度。
一見すると、「制度のすき間を埋める」「透明性を高める」
そんな前向きな言葉が並んでいます。
でも、現場でケアマネとして利用者と向き合っている立場から見ると、
どうしても拭えない違和感があるのです。
囲い込みは、本当に防げるのか
住宅型有料老人ホームは、もともと
事業所と利用者の距離が近くなりやすい構造を持っています。
そこに
「専用のケアマネ類型」
「住宅と一体的な運用」
が入ってくると、どうなるでしょうか。
表向きは「独立性の確保」と言いながら、
実際には
- 選択肢が限られる
- 他事業所を勧めにくい空気が生まれる
- 利用者が“当たり前の流れ”として同じサービスを使い続ける
そんな静かな囲い込みが起きる可能性を、私は強く感じています。
ケアマネは、本来
利用者の代弁者であり、調整役です。
制度の中に囲い込みの芽があるなら、
それはケアマネの存在意義そのものを揺るがします。
利用者負担「1割」は、本当に軽いのか
今回の制度では、
原則1割の自己負担が想定されています。
数字だけ見れば「1割」。
でも、私たちは日々こういう声を聞いています。
「これ以上、毎月の支払いは増やせない」
「少しでも負担が減るなら助かる」
高齢になり、収入が限られる中での1割は、
決して軽いものではありません。
これまで
無料だったケアマネジメントにお金がかかる
この変化を、利用者や家族はどう受け止めるでしょうか。
制度の理屈と、暮らしの現実。
その間にあるギャップを、誰が埋めるのでしょうか。
「制度ありき」になっていないか
介護の制度改正を見ていると、
いつも同じ不安がよぎります。
「現場の声は、どこまで届いているのだろうか」
書類は増え、説明は複雑になり、
そのしわ寄せは
利用者と、現場の職員に降りてくる。
今回の制度も、
本当に必要なのは
新しい仕組みではなく、
今ある制度を活かし切ることではないのか。
そんな思いを、私は抱いています。
それでも、声を上げ続けたい
私はこの制度案に、
反対の立場です。
それは変化を恐れているからではありません。
むしろ、
「利用者の暮らしが、より良くなる変化なのか」
そこを問い続けたいからです。
ケアマネは、制度を回すためにいるのではない。
利用者の人生に、静かに伴走する存在でありたい。
だからこそ、
囲い込みにつながる可能性や
利用者負担が増える制度には、
立ち止まって考える必要がある。
そう思いながら、
今日も現場で、利用者と向き合っています。

