

― ケアマネとして、この方向性に強く疑問を感じる理由 ―

2025年12月8日、自民党の議員連盟が
「住宅型有料老人ホームのケアプラン有料化」を視野に入れた決議を
厚生労働省に提出したというニュースが報じられました。
たしかに今回の決議では、
一般在宅のケアプランは0割負担の維持を要請している ため、
一見すると利用者負担の影響は限定的に見えるかもしれません。
しかし、現場でケアマネジメントに向き合っている私は、
この動きを “改悪の始まり” と受け止めています。
「負担するのは住宅型だけだから」という問題ではありません。
もっと根本的な、 制度の根っこの部分が揺らぎ始めています
有料化は「ケアマネへのアクセス」を狭める危険をはらむ
ケアプラン有料化は、対象がどこであろうと
「相談のハードルを上げる」という点で本質的な問題があります。
住宅型有料の入居者であっても、
- 経済的にギリギリの人
- 家族の協力が得にくい人
- サービス選択が難しい人
は多く存在します。
こうした人たちが “お金がかかるなら、相談は後で…” とためらうことで、
必要な支援につながるタイミングを逃す可能性が高まります。
ケアマネジメントは本来、
「困ったときにすぐ相談できる」仕組みであるべきです。
そこに料金がかかるというだけで、
制度の入り口が確実に狭まります。
これは ケアマネジメントの理念から明らかな後退 だと私は感じています。
「住まいの種類」で負担が変わるのは不公平で
今回の議論で最も違和感があるのは、
「住宅型有料老人ホームの居住者だけ負担するかもしれない」
という線引きです。
たしかに住宅型有料では生活支援や相談業務が一体化しているケースはありますが、
利用者の生活そのものは“在宅”です。
- 同じ自立支援を目指している
- 同じ地域で暮らしている
- 同じように介護が必要である
それなのに「住まいが違うから」という理由で
ケアマネジメント費だけ変わるのは、
現場の実態にも、利用者の感覚にもそぐわないと感じます。
制度は利用者の公平性を軸に整えるべきであり、
今回の議論はその原則に逆行しているように見えます。
ケアマネジメントを「有料サービス化」することへの強い懸念
ケアプラン有料化の先にあるのは、
ケアマネジメントを“商品化”する世界観 です。
「質が高いケアプランにはお金を払うべきだ」という論調もありますが、
私はこの考え方には賛同できません。
なぜなら、
- ケアマネジメントは“生活の権利”に関わる支援であり
- どんな人でも公平にアクセスできることが前提であり
- 経済力によって受けられる支援に差が出る構造は作るべきではない
からです。
ケアマネジャーは“生活の通訳者”であり、
“権利擁護の立場”として存在している職種です。
その窓口に 「お金がかかるから相談しづらい」 という壁を作ることは、
利用者の尊厳を守るというケアマネの役割と矛盾します。
■ 「住宅型だけだから大丈夫」は、極めて危険な考え方
制度というのは、一度動き始めると止まりません。
今回の「住宅型だけ」という限定は、
次のステップへの “布石” と見るべきです。
- 今は住宅型 ↓
- 次は高所得者 ↓
- その次は一般在宅も一部負担へ
こうした流れになる可能性は十分にあります。
実際、厚労省のたたき台には
“幅広く所得に応じて徴収する案” も含まれており、
今回の議論は制度全体の方向性の“前触れ”と捉えるべきです。
ケアプラン有料化は 段階的に広がるほど影響が大きくなるため、
最初の一歩で止めることが重要 です
ケアマネとしての結論:「これは改悪であり、利用者に不利益をもたらす」
私は現場のケアマネとして、
今回の動きには強い違和感と危機感を覚えています。
理由は明確です。
● 相談の入り口が狭まり、支援が遅れる
● 経済状況によって支援の質に差が出る
● 利用者の公平性が損なわれる
● ケアマネジメントの本質が「商品化」される
● 将来的に一般在宅へ拡大する可能性が高い
これらはどれも、
ケアマネジメントの理念そのものを揺るがす問題 です。
“ケアプランは無料だから相談できる”
この安心感は、利用者だけでなく家族、そして地域全体にとって大きな意味を持ちます。
有料化は、その大切な土台を崩す行為です。
最後に──ケアマネは「利用者の権利を守る立場」であり続けたい
制度がどれだけ変わろうとも、
ケアマネが果たすべき役割は変わりません。
- 相談しやすい存在であること
- 利用者の生活や尊厳を守ること
- 公平で透明性のある支援を提供すること
- 制度の不合理があれば声を上げること
今回の有料化の議論は、
ケアマネとしての姿勢そのものが問われていると感じます。
私はこれからも、
「誰もが安心して相談できるケアマネジメント」 を守る立場であり続けたい。
これが現場のケアマネとしての、率直な思いです。

