シャーデンフロイデ「他人を引きずり下ろす快感」を読んで

「他人を引きずり下ろす快感」

何とも自己中心的で「悪口雑言」が飛び交いそうなサブタイトルに目が止まった一冊

ただ、批判的な感情を増幅させる内容ではないと感じたのは著者である

脳科学者の中野信子先生が執筆した点だ。

私が歴史物が好きでよく観ている「英雄の決断」という番組で、歴史学者の観点から出なく脳科学の視点、身体構造の要となる

脳から発せられる物質を歴史上人物を観測し時代の分岐点をその時代に生きた個人・民衆の感情・行動を興味深く考察するコメントに毎回「なるほど」と頷く瞬間が多かったせいか、脳科学から紐解く人間の行動心理に興味が湧き、今回の一冊を読むこととなりました。

本の内容は人が行動を実行に移行する際に現れる脳内物質から生み出される感情から集団・環境による変化から個人が思い描いている理想とかけ離れた現実に進みがちで、そこには「妬み」「他人の不幸を喜ぶ」という人間が本能的に備わっていることを説いています。

著者自身が学んだ脳科学での実験で立証される人の本質的部分に私自身を取り巻く環境・人間関係で当てはまる章が多く、時にショッキングになりながらも、自分が生きているこの現在進行中に客観的に捉えるヒントを得ながらページを軽快にめくりました。

鬱蒼とした森に沈む夕日。
青い空を背景に、芝生の平原に立つ風力タービン。
海岸に続く尾根の上に太陽が輝いている。遠くでは車が道を走っている。

そこで注目した章は

「愛と正義のために殺しあうヒト」

そこには愛の正義の矛盾がとりあげられていて、正義に対し強い信念を持ち他者に伝えることは危険をはらむ大きな動きとして認識させられました。

SNSに馴染みながら生きている現代人に「承認欲求」に駆り立てれられている現状も、著者はそこで発生する脳内物質を紹介しながら伝えています。

脳の構造そのものが愛を育み、正義を固定化し戦争への発展し、時には抑制することで個人と集団とのせめぎ合いが起こったりと考えさせられる一冊でした。

感情が上手く行動に作用しない時、背景にある脳内質を理解し立ち止まれる一冊。オススメです。